タコノキ

実がなる

『暇と退屈の倫理学』からの連想(二)〜「何者か」について

人は何かから疎外されている。その結果、「どうして自分がこんなことを?」と感じたりする。その疎外を、「本来的な」何かへの回帰で埋めようとするのは、安易で自然で強烈な誘惑なのであった。 しかしそうした本来的なものの存在を仮定した瞬間、その状態に…

『暇と退屈の倫理学』からの連想

本来的なものなど存在しないと言って、十把一絡げに疎外そのものをも否定してしまうなら、結局そこに生まれるのは現状追認の思想である。疎外を否定した以上、どんな思想も相対的に位置付けられてしまうからだ。 國分功一郎 『暇と退屈の倫理学』 本文の引用…

生活と未来と数年前の自分について

何か書こうと思った。金を使うことについて考えていた。 最近は毎月いくら貯金に回して、いくら自由に使えて、そうすると預金残高がいくらになって、みたいなことを考えるようになった。 昔、ほんの数年前はこんなことをまったく考えなかった。 すごい高給取…

耽溺行 入間市編

儚く美しげなものにいつしか興味がなくなった。 おれは強かなものばかり好むようになった。 それは自ら強かになるためだろうか。 儚く美しげな気分も、たまには思い出すべきである。 そうして、思い出す程度にすべきである。雨が降っている。かまわず歩く。…

具合の悪そうなおじさん、めっちゃいる

会社に行くと具合が悪くなる。 際立った不調を即座に訴えるような、例えば家を出ようとするとお腹が痛くなるとかそういうことはないが、会社にいる間の体の不調をつぶさに観察すると大体以下のような具合である。朝自席に着くとまず今日やることはなんだった…

生まれ育ったことと、老いること

近ごろは親とよく会うようにしている。家を出て、親と時々会うのは、過去に立ち戻り、自らの生まれの記憶をたどり、かつての日々を思い出すことにとどまらず、過去どのようにおれが育ってきたのかをこの身に引き受ける壮大な試みである。 生まれ育った過去は…

偶然は苦しい

今日はすいませんと何度頭を下げたかわからない。 今日はよろしく頼みますと何度人に言ったかわからない。 おれがテキトーに言ったことの間違いとそのすっぽかしが毎週毎日山のようにやってくる。覚えてねっつのそんなこと。すみません。すぐやりますんで。…

雨の日

雨が降っているのにあまりに暖かい。 雨が降っていても暖かいことがある、冬になるとすっかり忘れるが、当たり前である。 じとじとしているが気分は悪くない。 外気がじとじとしているなら、おれもじとじと陰気な顔でとぼとぼ歩いていてもよい。 今日は一日…

スピノザ「エチカ」を読んでる(五) -オニオンリングも神である-

第二部に入る。第一部まで神自体の性質について述べられてきた。 初めに書かれている通り、第二部からは神から生じる一切について話をするという。 しかし一切全部の話をすることは不可能だから、その中の一部について述べていくという。 それは「人間精神と…

散歩の癖、インターネットへの投稿

散歩の癖がある。ここではあえて癖という。 たとえば休日の特に予定のない時間、本でも読みに行くかと、雨も降っていないしでかけるとする。 すると歩いて一番近い店が混んでいる。ここで考えを変えて家に大人しく戻ってもよい。今日は家に誰もいないのだか…

スピノザ「エチカ」を読んでる(四)

定理二八。 世界の一切は神の属性の変状または様態であるとずっと述べられているが、永遠かつ無限でない個物がこの世は確かに存在しており、にもかかわらず神の属性のすべては永遠かつ無限でなければならない。 ようは、この世のすべてが永遠かつ無限である…

スピノザ「エチカ」を読んでる(三)

定理一六: 物の定義を認識した知性は、特質を結論する。それは、その「物」の特質と言っているのだろうか?定理一七: そういえば、自己の本性の必然性のみによって存在するものを「自由」といっていたのだった。神のみが自由ならば、人間は自由ではないのか…

献血の楽しみ

外に出たら雨が降り出した。最近暖かいと思ったら急に寒くなる。冷たい風を浴びながら歩いていると駅に着いた。 ホームに入ると雨が電車のあたまを叩いている。空には雲が立ち込めてしばらく止む気もないという。 献血に来た。街頭で赤十字の人が呼び込みを…

うわごと

自分にとっての享楽とは街をながめて歩くこと、ゲームをすること。 日々の享楽を十分に満喫しながら嫁とも仲良くやりぼくはどうやら人に振る舞っていないと我慢がならないようである。 飯をつくり嫁におでかけの提案をし友達と遊んであげる、左様遊んであげ…

スピノザ「エチカ」を読んでる(二)

思うこと 通勤電車の中でヤな気分になりながら、ふと思う。 いくつかの定義、いくつかの公理を踏まえ、十数の定理によって存在することが証明されたスピノザ的神の実体は、はたして何の救いになるのであろうかと。 われわれ俗人が神と口にするときはいつも、…

スピノザ「エチカ」を読んでる(一)

はじめに この記事は岩波文庫 青615-4 「エチカ」を読んでいる時のメモであり、実況的な思いつきです。 ほとんど自分のために書いているので、「エチカ」が手元になければ何を言っているのかさっぱりわからないと思います。 けれども願わくば、偶然、手元に…

やってられんぜな半休(3162字)

最近は週に一度半休を取ることにしている。やっていられないからである。 やっていられなくなっているのは自分のせいであって、やっていられないようなやり方をしている自分のせいに他ならない。 ようするに、勝手にやっていられなくなっているだけである。…

文章と運動(3983字)

文章で何かを喜ぶことは思ったよりも難しい。すごい、やったー、みたいなことを書こうとすると、もうそれだけで終わってしまう。 おれが捻くれ者なのではなくて、文章を書くというのはだいたいそういう方向に偏っていくものなのだろう。誰かを褒めるより悪口…

情熱大陸と憧れ(4045文字)

なんというか、「情熱大陸」的なものは長続きしない。 別にあの番組がもう長続きしないとか言ってるわけではない。 あのナレーションをバックに頑張る感じというか、シビアにキリキリやりつつも、そういう自分を客観視して、 「ハア何やってんだろうなあ俺、…

2月24日、25日

自分がいなければ困る人がいる、自分がいないことに不満を抱く人がいる、あるいはそのような状況、に、おれはおれ自身をよく追い込んでしまう。 おれは今できる全てをやろうとして身の回りのことすべてに関わりたがる。 周囲の人々の人手人足人数の勘定に常…

疲れと力について

休んでみた。暇だなと思った。だからといって、すぐに働きに戻りたいわけではない。 働かない日が続くと暇になるが、この暇が良くない。なぜ暇になるかといえば、精魂傾けなすべきことが足りないからである。 俺の精魂傾けなすべきこととは、仕事場でやるこ…

灯がともる

黄昏近くほど近く こんこん市役所灯がともる めいめい点滅灯がともる なんだか高い塔の上 赤くちかちか灯がともる 西陽きらめき欅の木駅舎の隙間 埃のにおい 暮らしありあり窓の隅 黒く汚れて陽が沈む

通勤電車より(三)

老いた人について 歳を重ねると無理が効かなくなるという。 おれはなんとなく、これはいまいち正確ではないと思っていて、正確には自分の無理を自覚し、無理をしたときの不利益を勘定し、無理を避ける能力が、歳を重ねたとようやく言えるような歳になって、…

人の話、人と話すこと

「面白い話」をしている人のそばで、その人の話し相手になるのは存外常に退屈なものだ。それとも、おれが人の話をうんうんと聞くのが嫌いなだけかもしれないが。 どうせ後者だろうと思わないで、この話の続きを聞いてほしい。 どこかの大学教授がラジオで釣…

マクドナルド

マクドナルドは前向きである。 子供を見かけた。店の前ではしゃいでいる。 よく似合う。はしゃぐ子供がマクドナルドにはよく似合うのである。 自分が子供の頃にマクドナルドに連れて行ってもらった時のことを思い出してみる。一つの紙にくるまれたパンの間に…

通勤電車より(二)

一 生活上の雑事にはどれだけ時間をかけてもよいし、またそうすべきである。 全てに優先して煮炊きや洗濯、ゴミの片付けをするべきであるし、それにどれだけ時間がかかろうとも悪いことではない。 こうした前提をもっておれは毎日過ごしているのだけれども、…

寝床より - 体について

マッサージの心地よさとは筋肉なりなんなりがほぐされるのが本分ではない。技術を伴う強い刺激によって、己の身体を誰かさんに支配されるこの喜びこそが本分なのである。 血流が良くなるとかなんだとかはついでの効能にすぎない。しっかりと強さがありながら…

日曜日の夕方とグリーン車について

腹が減っているのだかいないのだかよくわからない。 朝飯と、昼飯らしきものを食べた覚えはある。 日曜日の朝、嫌な地震に驚き目が覚めてから漫然と過ごし16時48分、今この陽が傾き、やがて沈みゆくこのとき、おれはいったいどうしたらいいのか全くわからな…

通勤電車より

一 朝目覚めて高速で思考がめぐる。巡りはするが文字通りめぐるだけであり、表に出ることはない。表に出そうとすればそれはただ不可解なだけであり、後から何を考えていたのか思い出すこともできない。 こうした思考は脳細胞の遊戯とでもいうべきものであり…

1月7日〜1月13日

仕事中のおれは、そうでない日のおれとは全く別の回路で、全く別のものとして動いている感じがする。 普段出ない手癖が出る。背中で手を圧迫するような座り方。口元に手を当てていかにも考え込むような仕草。眉間のあたりに常に力が入っている感じがする。シ…