タコノキ

実がなる

短いのふたつ

湯呑みを握る

湯呑みを握って茶を飲むと、親指が下唇あたりに触れる。この感触が温かい茶をうまくしているような気がする。
子供のころ読んだいわゆる「科学の本」に書いてあった実験を思い出す。
いま、輪ゴムがもし手元にあったら一緒に試してもらいたい。まずは輪ゴムを伸ばさずに、そのまま唇のあたりに当てる。この時の冷たさを覚えておいてほしい。続いて、みょんと伸ばしながらもう一度唇のあたりに当てる。
どうだろう、伸ばしていない時より、伸ばした時の方が少し温かいはずだ。

この原理等々は何も覚えていないが、唇周辺が温度変化に鋭敏であることはわかる。このあたりの皮膚にこれほどの感度があるのならば、茶を飲むときに指一本が触れるか触れないかで、食味の感じ方が変わったりするのもおかしな話ではないと思う。コーヒーは分厚いカップで飲んだ方が濃厚に感じる、という話もあった気がする。

ぬいぐるみ

ぬいぐるみをたくさん持っている。が、別に大事に飾ったり抱いたりするわけではない。ただいつも、何の気なしにその辺に、棚の空いたところに置いてある。
何の気なしに置いたから、いつもなんとはなしに目に入るところにある。おれにとっては、むしろ、だからこそかわいらしいのである。

きちんと丁寧に飾ってやるのもよかろうが、それは趣味の行いである。
生活の中にたまたまぬいぐるみが入り込んでいるだけのおれにとっては、何の気なしに置かれたぬいぐるみが、何の気なしに目に入ることが、うれしいのである。